モームが愛したタヒチ
 8. ティアレの話は、

 ティアレの話は、フランス語と英語とのちゃんぽんだった。
 つまり、どちらも同じくらい楽に話せるのだ。
 なにか一種歌うような調子だったが、それが妙に耳に快かった。
 もしも鳥に英語がしゃべれたら、きっとあんな調子なんじゃなかろうかと、そんな気がした。
「月と六ペンス」中野好夫訳




 タヒチの公用語は、フランス語なので、ここではフランス語と英語のちゃんぽんで会話をする。

 売店に行くと、店員が英語で話しかけてくる。

 英語で返事をした後に、フランス語で尋ねると、今度はフランス語で説明を始める。
 とこんな具合である。




 ちゃんぽんと言えば、ここでは非の打ちどころのない晴れの日々と、肩をすぼめたくなるような強烈な雨が交互にやってくる。


 常夏の楽園といえども年中晴れているわけではないらしい。


 変わりやすい天候のせいかどうかは明らかではないが、昨日あたりから鼻風邪をひいてしまったらしい。

 しかもこんな雨の日には海に入る気にもなれない。




 というわけで、暇をもてあました滞在客は売店に行って、同じく暇をもてあましている店員と無駄話に花を咲かせる。

 


 例によって、英語とフランス語のちゃんぽんの会話。

 鼻がつまっているせいで、フランス語のほうがうまく通じる気がするのだが、おそらく気のせいなのだろう。