夜はおどろくばかり静かだ。
南十字星、キャノウパス(アルゴス座の最大の星)、それらの星の輝きは眼を射るばかりである。
そよ吹く風もなく、空気にはえもいえぬ芳香がある。
空にシルエットを描くやしの木々は、さも耳をすましているかの様子。
ときおり、海鳥のもの悲しげな鳴き声が聞えてくる。 |
「作家の手帳」中村佐喜子訳
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早朝。
まだ暗いうちに眼が覚めてしまった。
まだ時差ぼけが残っているのかもしれない。
あるいは、昼寝のせいだろうか。この島に来てから、泳いだ後に昼寝をするのが習慣になっている。
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バンガローの外に出ると、西の空はまだ真っ暗で、漆黒の幕の真ん中に穴が空いたように月が浮かんでいる。
天空には無数の星が輝いているが、南半球の星座をよく知らないぼくにとって、それは神話以前の自然の輝きである。
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夜の島はおどろくほど静かである。
波の音さえほとんど聞えない。
板張りの遊歩道の上を裸足で歩くぺたぺたというぼくの足音が聞こえるくらいである。
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西の空の漆黒は、見ているうちに濃紺へと変わっていく。
それもそのはず。
島の東側では、新しい一日を迎えて、空が少しずつ明るさを増している。
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刻々と変わっていく色と光の変化は、非常に緩慢であると同時に、非常にダイナミックである。
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