9. ロバの日常 |
ぼくが暮らしている風車小屋は、非常に変わったつくりをしているが、一応アパートメントホテルということになっている。
というわけで、一応1日に1回、メイドがシーツの取替えやバスルームの掃除をしに来てくれる。
もっとも、純粋な家族経営なので、メイドといっても経営者の家族のひとりで、最初の日にぼくを案内してくれたマノリスのお母さんである。
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マノリスのお母さんは、嵐が苦手らしく、激しく雨が降って風が強い日には来てくれない(あるいは、来ても「なにか足りないものはない?」と言い残してすぐに帰ってしまう)のだが、ときどき気のきいたこともやってくれる。
今日は、クリスマスも近いということで、ダイニングテーブルにクリスマスバージョンのテーブルクロスをかけていった。
純粋な家族経営だと、サービスも独特である。
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例によって街に出て、市場を覗いてみることにした。
市場といってもこの島の場合は、路上に野菜と魚を並べただけの非常にシンプルな市である。
魚は日によって品揃えが違っていて、どうやらその日の朝近くの海で獲れた魚をそのまま持ってきているらしい。
いわしなどの小魚が多いが、今日はさばもあった。
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市場でブロッコリーとぶどうを買い、寄り道をしながら風車小屋まで帰った。
街外れの道に迷い込んで、角を曲がったところで、突然塀の上から面長の顔が現れた。
不意の闖入者を見るような目でぼくを見ている。
もっとも、そんなふうに見えるのはぼくの偏見で、ロバは特に何も考えていないのかもしれないが。
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塀の裏側はロバ小屋(もっとも小屋はなく、塀にそっていい加減な屋根があるだけ)になっていて、数頭のロバが退屈そうに草を食んでいる。
もっとも、退屈そうに見えるのはぼくの偏見で、彼らは彼らの日常を普通に過ごしているだけかもしれないが。 |
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