7. イア |
昨日会ったクレオパトラは、去年までアテネに住んでいたのだが、都会の喧騒が嫌でサントリーニ島に引っ越してきたらしい。
今はサントリーニ島のスーパーマーケットで働いている。
島で一番大きなスーパーマーケットらしい。
クレオパトラは、土曜と日曜が休みなので、昨日はマイケルとカフェでくつろいでいたというわけだ。
「明日の日曜は、父とイアに行くことにしているのですが、よかったら一緒に行きませんか?」
昨日、カフェを出るときにクレオパトラに誘われた。
イアはサントリーニ島の北端にある街で、非常に美しい街であることはガイドブックを見て知っていた。
ぼくはよろんこんで招待に応じることにした。
|
|
今日の午後、風車小屋の前で待っていると、クレオパトラとマイケルがクレオパトラの運転するプジョーで現れた。
風車小屋からイアまでは車で20分。途中、断崖に沿った道路を走る。
景色はすばらしいが正直言ってちょっと怖かった。
断崖に沿って走る曲がりくねった道を抜けると、目の前にイアの街が現れる。
そして、イアの街を見た瞬間にそれまでの恐怖心は好奇心へと変わっていたのだった。
|
|
|
|
|
街の入口にある公営駐車場に車を停めて、石畳の道を奥へと進んでいく。
通りには、見事といっていいくらい誰もいない。
もちろん、店もレストランもカフェもすべて閉まっている。
この街の住人ですら、実際に存在しているのかどうか疑わしい。
|
|
|
|
|
|
|
街の時計台の時計も止まってしまっている。
誰もいない街には、時計など必要ないのかもしれない。
|
|
|
|
|
イアの街は、建物、広場、道のすべてがこじんまりとしているのだが、街の中心にある教会もこじんまりとした上品な建物である。
教会の前には、これまたこじんまりとしたクリスマスのイリュミネーション。
夜になると、誰もいない街にクリスマスのイリュミネーションの灯りがともる。
|
|
|
|