サントリーニ島のクリスマス
 5. ダットサンとエーゲ海

 冬のサントリーニ島の困ったところは、なんにもすることがないことである。そして、冬のサントリーニ島の素晴らしいところは、なんにもすることがないことである。

 つまりその人の生活スタイルによって島の評価が180度変わるわけだが、ぼくの評価が後者であることには疑いがない。

 サントリーニ島は、なんにもしたくないという怠け者にはうってつけの島なのである。

 というわけで、なんにもしたくないという怠け者は、風車小屋の外の石のベンチに腰掛けて一日中本を読んだりする。


 すると、どこからともなく猫が現れて、中途半端な距離を置いて座ったりする。

 読書の合間に海を眺めたり、猫の様子を見たり。

 それでも、1日1冊くらいのペースで本が読めたりする。

 今日読んだ通称「ダットサン民法」の一節。

 「思うに民法の規定には不備がある。」

 こういうことがさらりと書いてあるところがこの本のすごさなのかもしれない。


 そんなダットサン民法をエーゲ海をバックに置いてみたりする。


 読書の後、怠け者は夕方からビールを飲んだりする。

 すると、ビールを飲みながら見るにはうってつけの夕日がエーゲ海に沈んでいく。

 そんなふうにして、今日も風車小屋の1日が終る。

クリスマスまであと6日。