サントリーニ島のクリスマス
 1. 風車小屋に到着

 日本から予約をしていったアパートメントホテルは風車小屋の形をしていた。

 ギリシアの島では、ほとんどのホテルが冬の間休業しているので、数少ない候補の中からホテルを選ばざるをえなかったのだが、まさか風車小屋で暮らすことになるとは思っていなかった。


 1階はキッチンとリビング。

 スペースとしては十分広いが、キッチンは狭くて使い勝手がよくなさそうである。

 丸い壁をなぞるようにして、1階から2階へ円形の階段がつづいている。

 2階にはベッドルームとバスルーム。

 ベッドルームは広くて快適そうだが、バスルームにはシャワーしかない。

 島の給排水設備が悪く、バスタブはないらしい。

 「どうだ、いいだろう?気に入ったか?」と部屋を案内してくれたマノリスが得意げに言う。

 円形の空間そのものに慣れないせいもあって、いいかと聞かれてもすぐにはよくわからない。

 2階には3つの窓があり、すべての窓を開け放つと、それぞれ教会、海、白い街が見えた。

 景色は申し分ない。

 「うん、気に入ったよ」とぼくはマノリスに言った。


旅の荷物を解いて、さっそく街に出かけてみることにした。

街と言っても、2日もあればすべて見てまわれるくらいの大きさである。
急ぐ必要はない。

 ゆっくりと細い石畳の道を歩いていたら、さっそくサンタクロースに遭遇した。

 時折り吹く風に揺られながら、家の壁をよじ登っている。

 この島ではずいぶん早くからサンタクロースが活動を始めるらしい。

クリスマスまであと10日。