「見てごらんなさい、この水は鵞鳥の脚みたいな形をしてセーヌに流れこんでるでしょう。
ここがマルヌの運河。」 |
ジョルジュ・シムノン「第1号水門」 |
ジョルジュ・シムノンの小説を読んでいるとパリの運河が時々出てくる。
小説の中の運河は、あるときには死体が発見される場所であり、あるときには事件の謎を解く鍵になる。
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パリ19区にあるヴィレット貯水池。
ここは、3つの運河(サンマルタン運河、ウルク運河、サンドニ運河)が合流する場所、あるいは始まる場所である。
豊富な水量をたたえた河岸は、さながら港のようである。
実際、多くの船が行き来する貯水池はパリの中の港にほかならない。
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船は、水門を開け閉めすることによって、上流または下流へと運航していく。
下流から上流へ進む場合、船が水門を通った後に、まず下流側の水門を閉める。
次に上流側の水門を開けて、水位を上げる。
船は次の水門を通り、再び下流側の水門を閉める。
これを繰り返していくわけである。 |
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運河の入り口には信号が設置され、標識まである。
運河は、文字通り、水の路なのである。
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「そのさきがオート・セーヌ(セーヌ川の上流)になる。
オート・セーヌをすぎればブルゴーニュになるし、ロワール川、リヨン、マルセーユ、とこうつづく。
ル・アーヴルとルーアンにはバス・セーヌ(セーヌ川の下流)を通らなきゃならない。
この輸送を分けあってるのが二つの会社で、ひとつは『中部運河』、もひとつは『合同輸送』だ。
しかし、この水門からベルギーまでと、そのさきのオランダ、ザール、こいつはデュクローの縄ばりですよ!」
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同上 |
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シムノンの小説にもあるように、運河はフランス各地に張り巡らされ、ベルギー、オランダにまで伸びている。
各地から物や人を運んできた運河が、パリの繁栄を支えてきたともいえる。
そして、パリからも運河によって多くの物や人が運ばれていったのだろう。
ヴィレット貯水池は、そんな運河が合流する場所であり、始まる場所なのである。
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